式 辞
厳しかった冬の寒さも和らぎ、確かな春の息吹を感じる今日の佳き日、岡山県教育委員会 総括副参事 羽原敬一様、岡山県議会議員 小林健伸様をはじめ、多数の御来賓、保護者の皆様の御臨席を賜り、岡山県立瀬戸南高等学校、平成26年度卒業証書授与式が、厳粛に挙行できますことは、この上ない喜びであり、深く感謝申し上げます。
ただ今、卒業証書を授与いたしました149名の皆さん、卒業おめでとう。 皆さんは本校所定の課程を修了され、栄えある第29期卒業生として、晴れの日を迎えられました。心からお祝いを申し上げます。
保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。人生で最も多感で、しかも著しい成長期にあるお子様が、こうして卒業という慶びの日を迎えられましたことは、感慨もひとしおかと御推察申し上げます。また、今日まで3ヶ年にわたり、本校の教育活動のために、多大な御支援、御協力を賜りましたこと、全教職員を代表し、改めて厚くお礼を申し上げます。
卒業生の皆さんは、平成24年4月、希望に胸をふくらませて、本校に入学して以来、「創造・自律・友愛」の校訓のもと、学業をはじめ、生徒会活動や農業クラブ・家庭クラブ活動、そして、部活動に情熱を傾けてきました。とりわけ、命と向き合い、命を育てる学習や、夏の猛暑、冬の厳しい寒さに耐えての実習を通して身につけた力は、今後の皆さんを支える大きな財産です。
今、卒業式に臨み皆さんの脳裏には、どんな思い出が去来しているでしょうか。休み時間や部活動で交わした友との何気ない会話、授業や実習での先生方とのやりとり、友情を深め合った桃源祭体育の部、青春のエネルギーを燃やした文化の部、東京への修学旅行や伝統のシクラメン祭りなどの学校行事でしょうか。或いは、進路実現のために努力を重ねた日々でしょうか。本校での生活を通して、自分の素晴らしいところをきっと見つけてくれたものと信じています。本校での出会いと思い出は、皆さんの一生の宝物です。
さて、今から3年前、あの東日本大震災から丸一年が経ち、かすかに復興の足跡が聞こえ、世界一高い東京スカイツリーが完成した春、皆さんは本校での学業をスタートされ、振り返ると、日本では様々な出来事がありました。2020年夏季オリンピック・パラリンピックの東京開催決定、被災地仙台が本拠地の楽天イーグルスの日本一、同じく仙台出身の羽生弓弦選手の金メダル獲得や全米テニスでの錦織圭選手の準優勝。IPS細胞と青色発光ダイオードによる2度のノーベル賞受賞などの快挙が続き、大震災から力強く立ち上がった日本人の活躍がありました。
しかし、最近では、広島での土砂災害、御嶽山の噴火、スーパー台風の上陸、大寒波襲来など全国各地で大きな自然災害を経験し、自然と正面から向き合うことの大切さを実感しました。そうした中で皆さんは、3年間の高校生活を過ごし、心身ともに大きく成長されました。
これから新しい環境に飛び込んでいく皆さんに、今年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の主人公、文の兄、吉田松陰の人生を紹介します。
幕末の長州に生まれた彼は、アメリカからの巨大な黒船が来航した際、弟子の金子重之輔とともに、小舟で黒船に近づき、ペリーに自分たちをアメリカに連れて行ってほしいと懇願しました。 しかし、受け入れてはもらえません。そこで24歳の彼は、鎖国を破ろうとしたと、潔く自首し、牢獄に入るのです。彼は決して生きて、そこから出てこられない無期刑を受けましたが、獄中での1年2ヶ月の間に、600冊を超える数の本を読んだそうです。どうせ牢獄から出られる見込みがないのに、読書にふける彼の姿を見て、周りの囚人たちはあざ笑いました。しかし、最後まであきらめなかった彼は、恩赦によって出獄すると、明治の日本を背負って立つことになる、多くの人材を生み出した学校「松下村塾」を開校するのです。
彼は、もう一生外に出られないかもしれないという絶体絶命のピンチを迎えていても、決してあきらめず、自分に与えられた環境を受け入れ、今できる精一杯のことを行いました。そのことによって、彼は人生の扉を大きく開き、次のステップに進むことができたのです。
これから社会に出て行く皆さん。皆さんの前途には、明るいことばかりでなく、困難が立ちはだかることも少なくないでしょう。そんな時、決してあきらめないこと、その時に置かれている境遇で何をすべきかを考え、精一杯の努力をし続けてください。そうすれば必ず、あなた方を支えてくれる人、応援してくれる人に巡り会え、道が開けるはずです。そうして、自ら切り開いた道にキラリと輝く花を咲かせてください。
いよいよ本校を巣立つ時がきました。149名の卒業生一人ひとりの限りない前途に、幸多いことを心よりお祈りし、式辞といたします。
平成27年3月1日
岡山県立瀬戸南高等学校長
安 井 盛